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ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第二話2009/04/28 10:49

結局先日の練習試合はわずかな差でウチの高校が負けた。だが何故か黒鳥も機嫌が良かったので私は早々に引き上げた。
あの試合で私はコロポックル様と知り合う事が出来、その上彼女にすんばらしい女子を紹介して貰えたのだ。

「ふっふっふ……コロポックル様にバービーと、もう一人はちょっとミステリアスな雰囲気の女子だからジプシーでいいな…」

登録済みの携帯番号とメールに、呼び名を入力しながらほくそ笑む私。
なんとバービーこと、五条 芹香はあの試合で私がやらされるであろうタイムキーパーをしていたのだ。
そして彼女とジプシーこと市橋 珠洲もバスケ経験者なので、いろいろと教えてくれるという約束までとりつけた。
勿論それと引き換えに私が彼女達と約束したのは勉強を見てあげるという事。
これで今度の招待試合は何とかなりそうだ…!と、胸を撫で下ろした私の携帯に入った一通のメール。

『今度の土曜日に話したい事があるんやけど、都合はどう?』

特に予定がなかったので、いつも利用している喫茶店の名前を告げそこでの待ち合わせにした。
そして少し早めに来た私はいつも頼むカモミールティーを飲んでいるのだ。

……メアドもゲットしたしな。それにしてもいいねぇ秀学館は、制服も生徒も華やかでさ。

「へぇ…今度はコロポックルにバービー、それと…ジプシーってか?」
「新しいお友達だ…って!おい!ジャン!いつの間に!?」
「沙織ちゃんがニコニコ顔で入ってきた時声かけよう思たんやけど、トリップしてるんやろなぁ~思てずっとタイミング計ってた」

本日私をここに呼び出した張本人であるジャンが私の携帯を覗き込んでいたのだ。
のっぽで細身、色白の肌とブロンドの箒頭(ほうきあたま)、そしてグリーンアイズの持ち主であるこの男は日仏ハーフであり、私の婚約者なのである。

「で、とても暇人とは思えない医学生であるアンタがこんなとこでお茶してる時間があるとは思えんのだが…」
「つれないなぁ沙織ちゃん。曲がりなりにも俺ら恋人同士やで?しかも結婚の約束までしとる仲やんか」

そう言ってウィンクするジャン。
するとあちらこちらからカシャカシャという機械音と共にたかれるフラッシュ…
まぁ、観賞用には持って来いの外見だからなぁ…
どさくさに紛れて自分が飲んでたコーヒーと荷物を私の隣に置き、いつもの人懐こい笑顔を浮かべている。

「我愛しのフィアンセよ、ご機嫌うるわしゅう…」
「やめろ。折角の紅茶が不味くなる」
「相変わらず口悪いなぁ。でも、そんな照れ屋さんなところも好きやで?」
「っっ…!//////」

そう言って私の手を取り接吻をする関西訛りの仏蘭西男。
すると、途端に悲鳴が飛び交う店内

……だから極力来たくは無かったのだ。

しかし、この目の前の男はそんな店内の様子を無視するかのように平然とした顔でさらに話を続ける。

「なぁ沙織ちゃん、この後なんやけど」
「約束だからな。今のところ予定は入れてない」
「なら、ここでもうちょっと待っとれる?今自分を捕まえたゆうメールしたから」
「メール?」
「くす…そのうちわかるよって」

ニコニコ顔でそう言うジャン。しかし、私はとてつもなく嫌な予感がした。
そして数分後…

「きゃあああああ!アレORITOじゃないっ!」
「ナマよ!ナマ!」
「写メ!写メ!って!ちょっと私の携帯どこよ!?」
「もしもし~~あ!あたし!!ね、今目の前にORITOがいんの!え?場所どこって?えっと……」

一斉に騒々しくなる店内。そしてさっきの倍の量で飛び交うフラッシュと機械音。
…これって、まさか…………殿下?

「くす…只今人気急上昇中の新人俳優は流石にちゃうなぁ…」
「ほっ…本当に殿下?」
「くすくす…織斗だけやないで?」
「へ?」

ジャンの言葉に疑問符だらけの私。すると…

「ちょおっ!今度はナオが来たよっ!」
「うっそぉ~!マジぃ~?」
「ガチに超ヤバツーショットってやつぅ~?」

あの変な日本語と語尾伸ばしは………偏差値が可愛らしい数字で有名な隣の女子高の生徒だな。
っつーか、なんで上まで来るんだ?
なるべく二人に見つからないように慌てて下を向く私。しかし…

「お~~い」

この馬鹿!何でわざわざ手を振るのだっ!!

「ジャン!そこにいたのか…!」

げっ……ジャンが殿下に見つかった!!やばい!どこかに隠れなくては…!テーブルの下にでも潜るかそれとも…
私はいつも外出の際に持ち歩いている大き目のバックをテーブルの上に置き、自分を隠すようにしたのだが…

「「沙織!!」」

万事休す………神様、私の安らぎの一時を返して下さい!
私の姿を見つけるやいなや、二人の従兄は長いコンパスを有効に使って時折テーブルに座っている女性に笑顔を振りまきつつこちらへとやってきた。
仕方なく私も開き直って自分の前に築いた壁を取り除き、営業スマイルを貼り付け立ち上がる。

「お…お久しぶりです。織斗兄様、那織人兄様」
「よっ沙織、お前しばらく見ない間にまた背が伸びたんじゃねーか?」

上…それはあっしには禁句ですぜ?何しろこの間測ったら175cmになってたんだから…
ああ!コロポックル様のような愛らしい身長になりたいっ!

「くすくす…いいんだよ那織人。沙織は俺達に合わせて成長してるんだから」

ひょい

「ひゃあっ!ちょっ…」
「ん…ちょうど抱えやすいサイズだね。これ以上小さかったら俺の子供と間違えられそうだ」

……会った早々に縦抱っこかよ。そりゃあ身長が193cmもある殿下からしてみればあのコロポックル様だとお子様になってしまわれるかもしれないけどさ…
それよりさっきから視線が刺さって痛いのだっ!頼むから自分らが有名人だって自覚してくれ!!

「くすくす…沙織ちゃんのゆうたとおりや。織斗、お前ほんまに抱っこちゃんなんやなぁ…くすくす」
「何とでも言え。俺にとって沙織は可愛い可愛い従妹なんだ」
「あ~あ、織斗兄のシスコンがまた始まったよ。ってか、沙織が恥ずかしがってるし、そろそろ降ろしてあげたら?」

ほっ…上、あんたたまには良い事言うねぇ……って!こら!頭ナデナデするな!私は子供じゃない!
っつーか、この状況ってやばいんでない?ほら、窓の外にいつの間にかこちらを覗き込む人だかりが…

「くすくす…やっぱ芸能人二人来るとちゃうなぁ…、織斗、場所移さへんか?」
「そうだな。ジャン、お前には聞きたい事が沢山あるし…」
「それじゃ手っ取り早く俺のマンションにでもすっか?」

うっ…上のマンションだぁ~?いえいえ!謹んで遠慮致します。
私は当然の如く首をブンブン横に振って拒否の意を示す。

「それじゃ俺んちにすっべ」
「茂織叔父さんのパン屋か?」
「いや、離れの実家の方。沙織を連れてけばお袋が喜ぶし、そこのアンタも織斗兄の大学の友人なら歓迎されると思うけど?」

茂織叔父さんのパンかぁ……最近食べてないんだよな。焼きたてがめっちゃ上手くてさ、結構近所の主婦に評判だったりするんだ。
へっへ~~何か楽しみかも…

「それじゃあ決まりだな。沙織、ジャンの案内を頼む。俺と那織人はそれぞれ時間をずらしてここを出よう」
「だな。今だって外パニクってるし…有名人になるのも良し悪しってか?」
「ほな行きまひょか。沙織ちゃん、ナビ頼むで~」

ジャン、もしかしてここに教授の車で来たんじゃねーだろうな?

「くすくす…心配せんでもええよ?今日は俺の車で来たさかい。ほなお先~」
「織斗兄様、那織人兄様、それじゃ…」

こら!手を繋ぐな!!殿下が睨んでるんだぞっ!!
……っっ!!!なっ…なしてそんな所を触るのだぁ~~っ!!

「嬉しいなぁ…沙織ちゃんをこうして堂々とエスコート出来るんやから」
「こっ…腰!腰!」
「ささ、姫、参りましょうか?」

いつの間にか私にまで携帯が向けられてるのは気のせいか?
だ~か~ら、見世物じゃねー!
お前も接近し過ぎなんじゃ!ジャン!!西欧の民はこんなにベタベタして羞恥という感情を持たないのか?
殿下以上にスキンシップ過剰な婚約者(あくまでも契約上のだが…)に、私は思わず頭を抱えたのだった。

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