無料カウンター

ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第五話2009/06/08 09:49

何だ!なんだ!ナンダ!!一体全体何なのだ!!

「仙道さん、新田会長と別れたんだって?」

今朝校門から下駄箱までの間に上記の質問を何人の生徒にされた事だろう…。
その上…

パカ…
バサバサバサバサ…

「…………………」
「おはよう仙道さん……って!それってもしかして全部ラブレター?凄いねぇ…」

メールがこれほど普及したというのに、未だに懸想文を書く人間の多い事よ。
あ~あ、こんなの資源の無駄だぜ。只でさえ地球上から森林が減っているっていうのに…こんなの書く時間があるなら植樹の1本でもしろよな…。
下駄箱から落ちて足元に広がっている封筒をかき集めて溜息をつく。
もしやこれら全てに返事を書かねばならんのか?

「大変そうだね?手伝ってあげる」
「…ありがとう…」

クスクス笑いながら足元に散乱している懸想文を私のカバンにいれてくれる同級生。
彼女は確か隣のクラスで保健委員をやっていて面倒見が良いと評判の女生徒である。
結局私は懸想文でパンパンに膨れ上がったカバンを抱きかかえながら教室に向かったのだった。

*********************

ダダダダダダダダダ
ガラッ

「おあ(おや)?ふぁおい(さおり)ひゃん、ろっふぁお(どったの)?」
「……はぁっ…はぁっ…はぁっ……彩羅先輩、しばしの間匿ってくれぬか…」

昼休み、校則違反を承知で校内を全速力で駆け抜け生徒会室に飛び込んだ。
そこには運良く2年の文系クラスで生徒会副会長である櫻井 彩羅先輩しかおらず、私は咄嗟に先輩に助けを求めた。
すると口にタコさんウィンナーを咥えている彩羅先輩は、きょとんとした表情を浮かべつつも手招きし……

「ふぉふぉ(ここ)」
「忝い」

彼女は私のようなデカ物女でも充分隠れる大きい箱の後を指差した。ソレには北都高校創立以来行われた学校行事の録画が保管されている。遵ってかなり重い為簡単には動かせないのである。私は身体を丸くしてその影に身を潜めた。
すると……

ガラッ

「あ、副会長!ここに仙道さんが来ませんでしたか?」
「もぎゅもぎゅ……君たち1年だね?他に言う事ないの?」

生徒会室に無断で入ってきたのは私の同級生である。アイツ等は確か隣のクラスの…

「あの……」
「ヒトが食事中なのにノックもせずに入ってきて、開口一番にソレ?」
「「すっ…すみませんでしたっ!!」」
「あのさ、余計なお世話かもしれないけどさ、沙織ちゃんって結構礼儀を重んじる娘で、古風っていうの?今時珍しいタイプなんだよねぇ…」
「!!!!!」
「そっ…あの…その…」

う~む。流石は彩羅先輩だ。見た目はコロボックル様のように愛らしく私より年上とは思えぬのだが、中身はどうよ。
空手部員二人を相手に実に堂々としておるではないか!いや、アヤツ等の方が先輩に押されてる?

「わかったら、ちゃんとしてから出直した方がいいよ?今の態度を彼女が見たら君たち玉砕決定だから……」
「ご忠告ありがとうございますっ!!」
「先輩のアドバイス、しかと肝に銘じます!!」

そーだ!そーだ!さっさと退散するがいい!天地がひっくりかえっても、他校生との揉め事話が尽きない貴様等と男女の仲になる事などありえないのだから…!!
……などと心の中で歓喜の声をあげていると、弁当を食べ終わったらしい彩羅先輩の声が聞こえて来た。

「沙織ちゃぁ~ん、もう大丈夫だよ?」

その声を合図に私はすっくと立ち上がり、先輩の隣に腰掛けると抱きかかえてきたカバンの中から懸想文を全部出して弁当箱を引っ張り出したのだった。

*******************

「『入学式に初めて会った時から僕の目には貴方しか映りません―――』……いまいちだね。表現力はまぁまぁだから文芸部の生徒かな?」
「………………」
「『俺と付き合って下さい』…おーおーなんちゅうストレートなヤツ!」
「………………」
「『とりあえず友達から初めてみない?』………くくく…オトモダチねぇ…」
「………止めて下さい。メシが不味くなる」

先輩のおかげでやっと昼食にありつけたのだが、貴重なランチタイムに変なBGMを入れないで欲しい。
しかし、隣の沙羅先輩は便箋の趣味がどーとか、字が特徴的とかいう感想を交えて懸想文を読み上げる。

「………いったい私が何をしたというのだ?さっぱりわからん!」
「そりゃあ決まってるでしょ~?」
「?????」

弁当を無事食べ終わった私は再びカバンにしまうと頭をかかえた。すると横から暢気な声が聞こえて来たのだ。

「今まで新田のヤツが沙織ちゃんの虫除けやってたんだもん」
「虫除け…とな?」
「うん。虫除け。またの名を牽制。教師は勿論全校生徒が新田と沙織ちゃんが付き合ってるって思ってたらしいよ?」

は?今、先輩、何と?

「でね、今朝あんた達別々に学校に来たでしょ?っつーか、新田のヤツは今朝はやけに早く学校に来たらしいんだけどさ。
だから、二人が別れたらしいって噂があっという間に広まって今に至るって事!
この分だと沙織ちゃん下校時も大変かもね?」

苦笑しつつ爆弾を次々投下……いや、爆弾ではなくそれは最早核兵器に近いであろう。よりによって私とハエ男が付き合ってるだと?冗談じゃないっ!!しかし、彩羅先輩が嘘を言っているとは思えぬ!
う~む…………

「沙織ちゃんってさ、勉強は出来るし色んな事にも聡いし、美人だし、正にオールマイティ少女だって思ってたけど恋愛に関しては初心者だったんだね。あれだけ注目されてたのに気付いてないなんてさ、鈍すぎるって」

ガーーーーーーーーーーーーーーン!!!
………ショックだ。彩羅先輩にも愚鈍呼ばわりされるとは…。

ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第四話2009/05/24 10:18

「で、話って何でしょう?」
「一応釘刺しておこうかと思って……」

今私は生徒会室にいる。
勿論、目の前の男……黒鳥に呼び出されたからだ。
ふん!丁度良い!私もキサマに言っておきたい事があるのだ!!
私は不敵に笑う奴を冷静に見つめると、深呼吸をした。

「釘?私こそ新田会長にご忠告差し上げるべき重要事項があるんです」
「ほぅ……忠告ねぇ…」
「彼女……岩永女史は私の大切な恩人なんです。軽い気持で彼女に家庭教師を依頼されたのなら即刻止めて頂きたい」
「……………」
「あの方は今在籍されている帝都大の研究室を出たら修道院に入られるんです。邪な感情を抱いたところで無駄だと思いますよ」
「……………」

出来るだけ感情を抑えつつ言いたかった事を並べる私。だが、奴は顔色一つ変えず黙って聞いているだけである。

「彼女に家庭教師を依頼されたのは新田会長のお父上と伺いました。それって、やはり会長が拘ってるんですよね?でも、私がお見受けしたところ会長の成績なら家庭教師など不要かと思われるんですが?」
「………言いたい事はそれだけ?」
「へ?」
「なら、俺からも忠告…いや、命令かな?」
「は?」
「俺の事は『黒鳥』でも『悪魔』でも『魔王』でも…そうだな、いっその事※ベルゼブブとでも呼んでくれても構わない。が……」
「っっ……!!!!」
「『あの人』の事を『星の金貨』なんて安っぽい呼び方は今後二度とするな。『俺のミッシェル』の格が下がる!」

開いた口が塞がらないとはこの事か!?
な…何だ?何だ?『俺のミッシェル』って!!
自分は『ハエの王』で、幸穂さんは『守護天使』ってか?
いや!!そんな事より………

「会長、あの、もしかして……」
「仙道 沙織、キミに聞きたい事がある」
「………内容次第ではお答え出来ませんが?」
「キミは『あの人』といつどうやって知り合ったんだ?いや、キミはいつから『あの人』と昵懇にしている!?」

みっ…見てはならない物を見ている気がする……!!
初めてみたぞ?奴のこんな真剣極まりない表情(かお)は!!

「いっ…従兄が幸穂サンの知合いで…」
「まさか、キミの従兄が『あの人』と付き合ってた事があるとか?」
「ちっ…違いますっ!!従兄に北都の文化祭に来る様に言われて当時小学生だった私は迷子になって…それで彼女が従兄のところまで連れて来てくれて…」
「それは今から9年前?」

ズバリあてられ私はぶんぶんと首を縦に振った。すると…

「俺の方が先に『あの人』と会っているのにな……」
「へ?」

今度は苦笑を浮かべる黒鳥…いや、この際本人のご要望どおりベルゼブブ(ハエの王)に変更しよう……を観て思わず閉口する。
なっ…何だ?何だ?その表情は?
唖然とする私を他所に奴は遠い目をしたまま静かに語りだしたのだった。

*****************
「へぇ…沙織ちゃん、クリスとも知合いやったん?」
「…………殿下つながりだ」

今私は学校帰りにも拘らず車の助手席にいる。
運転手は…勿論となりにいる男だ。

「それにしても……妙なめぐり合せってあるもんやなぁ…」
「……私は今日初めて奴が『ただの男』だって事を知ったぞ」
「あはははは…それって書店におった眼鏡の彼やろ?一見クールな高校生に見えたんやけどなぁ…」

豪快に笑い飛ばす関西訛りの半分仏蘭西人…しかも、クドイようだが私の婚約者でもある。
私は、今朝自分の目の前で繰り広げられたまるで白昼夢のような出来事を必死に整理しながら、隣の男に説明した。

「冷徹、傲慢、自己中……奴に対して浮かぶ単語なんぞそんなもんだ。だからてっきり人並みの愛情や恋情なんて持ち合わせてないモノと思っていたのに…」
「それにしても『彼』、一途やなぁ……」
「そうか?」
「7歳から今日まで、ずっとクリスの事思い続けておったんやろ?」

……途中かなり姑息な手段を使っていたがな?
そう。奴は私にカミングアウトしたのだ。それまで奴が己の信念を貫き通す為に用いた最低と言えるであろう策略の数々を…

『父がどこかの施設に大分以前から寄付していたのは知っていた。そしてその施設で育った女性でとても優秀な女性がいると知ったのは4月に入ってまもなくだった。
父は何度かその女性に会った事があるらしく、彼女をとても気に入っていて兄の結婚相手にと望んでいたのさ。施設から届いた資料には残念ながら彼女の写真が無かったが、出身中学の名前を見て嫌な予感がした。
――――――この縁談がまとまると拙い!!
…何故かそう感じた俺はすぐさま兄の観察を始めた。
すると、兄には既に想う人がいて、その人がまだ高校1年という事までがわかったのさ。俺はすぐその女性について調査し、それが旧TAIRA建設社長令嬢で秀学館1年の平司 芽衣だと判明したんだ』

……最初は奴の自白を聞いて腹を立てたが、今は呆れてしまう。自分の直感だけであのコロポックル様に迷惑極まりないメールを送ったあげく、現役帝都大生である彼女の恋人にまでちょっかい出すとは…
己の恋路の為ならヒトサマの恋なぞ関係ないってか?いや!それ以前に、兄嫁候補の身上書をいくら家族だからって勝手に見てもいいものなのか?

「…幸穂サンの事を『俺のミッシェル』だとさ…」
「っぷ…!!大天使様か。彼女にピッタリやんか!」
「………あのな?あの人は常識の範疇を逸脱したお人好しで、究極の天然鈍感娘だぞ?この世には善人しかいないと本気で思ってるんだぞ?男のヨコシマな感情なぞ彼女の中では存在しないモノとされてるんだぞ?」
「…沙織ちゃんもヒトの事あまり言えへんで…」
「へ?」
「ま、本人にはわからんからええんやろなぁ…」

そう言うとジャンは苦笑しながら運転に集中する為なのか黙り込んでしまった。
私が幸穂さん動揺に鈍い人間だと?
だが、あのハエ男も同じような事を言っておったのだ。

『今まで仙道さんを度々呼び出しては同行させていたのは“あの人”の情報を得る為だったが、明日からは解放してあげよう。だが……』
『なんでしょう?』
『それだけが目的じゃなかったんだが…ま、鈍いキミでも明日になればいやがおうでもわかるだろうな…』

鈍い鈍いって…ヒトを愚鈍な奴のように言いおってからに…!
でも何故ジャンにまであの男と同じ事を言われねばならんのだ?


**************************

※ベルゼブブ(Beelzebub)……旧約聖書などに登場する異教神。ベルゼバブ、ベールゼブブとも表記される。新約聖書にもその名がみえる。この名はヘブライ語で「ハエの王」を意味する。―――Wikipediaより

ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第三話2009/05/18 16:19

「ふふ……それは大変だったデスね」
「…笑い事ではないぞ?」

そうなのだ。あの後私はジャンの運転する車に乗って茂織叔父さんの家に行き、後から来た殿下と上にシツコク詰め寄られたのだ。

「壊れた何とかの如くあの時私は何度同じ言葉を返した事か……!!」
「仙道氏の沙織ちゃんに対する愛情はマリアナ海溝よりも深いんデス」
「……病気だ。いっその事幸穂サンが殿下の恋人になってくれれば良かったものを…」
「とんでもありまセン!!住む世界が違いますデス!!私は彼と高校、大学で出会えただけで感謝してるんデスよ?これも神の御導きというもの……」

そう言って十字を切る敬虔なクリスチャン。彼女の名前は岩永 幸穂(サチホ)。
洗礼名ヨセフィーヌ。
腰まで伸びた染めてもいないライトブラウンの髪に、カラコンを入れずとも美しい色合いのヘーゼルの瞳。日米ハーフの彼女は両親を幼い頃に亡くし、施設で育った。
優秀で努力家の幸穂サンは帝都大学の理学部で教授の助手をしている。彼女がその教授の研究班と共に開発(?)したシステムとやらは大手企業に大変受けが良く、結構な額で売れるらしい。そうして稼いだお金で施設に援助をしているのだ。
しかし、とうの本人はゆくゆくは修道女となり彼女と同じ境遇の子供等を育てるつもりらしいが…果たしてそれがいつになる事やら……。
幸穂サンは高校・大学と殿下のクラスメイトという位置にいた。しかし、彼女は彼の取り巻き女子と違って当時殿下のひっつき虫子をしていた私に対しとても親切に接してくれた心優しきお姉さまなのだ。
そして今も心優しきクリスチャン様は時々私の相談相手を買って出てくれる。

「ところで、殿下がデビュー作の舞台チケットを送ったと聞いていたが…劇場で幸穂サンを見かけなかったぞ?」
「あれはデスね、他にどうしても観たいというお友達がいたので譲ったんデスよ。彼女ならきっと仙道氏の熱心なファンとなるでしょう……」

…どうせ、殿下のルックスにつられたミーハー女子であろう?
本当にこのお方は「お人好し」が服を着て歩いているような女性なのだ。
巷で有名な一日限定○○個の食べ物を購入する為に早朝から並んでいたのに、何時の間にか横入りされて買いそびれた…なんて話はしょっちゅうだし、バスや電車に乗れば必ずと言っていいほど席を譲る。
いいや!そんな可愛いランクではない!!たまたま電車で隣に座っていた男が彼女の肩に頭を乗せて気持良さそうに居眠りしていたからって……終着駅まで付き合うか?普通?

「そうそう。沙織ちゃん、私今度家庭教師をする事になったんデス。勿論今の研究を続けながらデスが…」
「ほぅ……」
「何でもどこかの大企業の社長さんの二番目のお子さんで…」
「ふむふむ…」
「真面目で勉強熱心で…」
「それは上々」
「将来私と同じ帝都大学に入りたいと…」
「私のライバルなのだな」
「ライバル…おお!その表現、ピッタリかもしれませんデス!!その方、沙織ちゃんの一つ上で…」
「現在高2か…」
「理系のクラスに入ってて…」
「私も来年は理系に進もうと思っているのだ」
「確か生徒会の役員をしてるとか…」
「ほう……ならば、先生方の覚えも良いと?それは何とも教えやすそうな生徒ではないか!良かったな幸穂サン。で、彼女はどこの学校なのだ?秀学館か?それとも…」
「沙織ちゃん、ソレ、違いますデス」
「秀学館ではない?ならば、栄華か?まさか聖藍や紅瑠では?」
「えっと…たしか北都デス」
「北都………」
「それと、『彼女』も間違いデス」
「…………………」

生徒=(北都+生徒会役員+理系)×大企業の社長の次男坊……ああ!これではまるで悪魔の方程式のようではないか!!

「……幸穂サン、大変嫌な予感がするのだが、その生徒の氏名に『ニッタ』という苗字と……」
「おお!沙織ちゃんのお友達デスか?『彼』の名前、『ニッタ ツヨシ』くん言いますデス!」

おお!ジーザス!!
主よ!貴方はこの誰よりも心優しき乙女に何と惨い仕打ちを!!
史上最強のお人好しで、全人類を超越した鈍感女で、その上恐るべき楽天家(オプテミスト)の彼女があの黒鳥を教えるだぁ~?

「……幸穂サン、悪い事は言わない。今すぐそのバイト断るのだ」
「?????何故デスか?」

ヘーゼルの瞳を見開き、きょとんと首を傾げる星の金貨様。
そんな彼女の両肩にガシっと手を置き、私は無謀にも説得を試みる。

「あやつは悪魔だ!!いや、最早あの男の腹黒さは魔王クラスに匹敵するだろう。拘ると碌な目に会わんぞ!!」

へたすりゃ、かの物語の少女のように身包み全て盗られてしまうかもしれないのだ!!
しかし、目の前の女性は急に真剣な表情になると…

「沙織ちゃん、日本の偉人は素晴しい言葉を世に残しました。ご存知デスか?」
「…………」
「『天は人の上に人を作らず人の下に人を作らず』。まさにその通りデス!!人類皆平等。差別や偏見はいけないデスよ」
「だ…だが、新田 剛史という男は本来なら貴方のような家庭教師を必要としない成績保持者で…」
「ならば彼は私に何かを求めているのデス。それは救いの手かもしれまセン」
「あやつがか?」
「そうデス。本日、藤埜教授宛てに新田 政史氏経由でツヨシくん自ら私に家庭教師を頼みたいとの電話がありましたデス」

ご指名ってやつかよ…。確かに幸穂さんは藤埜とかいうおっさん教授のお気に入りらしい。
真剣な表情で私を説得していた星の金貨様は、何時の間にか恍惚とした表情で両手を組んでおられ…

「迷える子羊を導く…これも大切な家庭教師の仕事デス!おお!神よ!よくぞ私にこの道を指し示して下された!」
「あ…あの……」
「岩永・クリスティーナ・幸穂、微力ながら彼を暗闇から光の中へと導きましょう!」
「いや!それは不可能だ!逆に貴方がヤツのブラックの影響を受けかねん!!な?まだ間に合うぞ?早まってはいかん!教授ともよっく話し合ってでだな…「くすくす……いつも冷静な仙道さんでもそんなに熱くなる事があるんだな…」…っ!!」

私の説得を邪魔するかのように現れた悪魔…もとい魔王!
……何故キサマがここにいる?
何を隠そう、今私と彼女がいるのは女性限定スイーツが美味と評判の喫茶店なのだ。遵って客は全て女性である。
私はコヤツが甘党とは聞いてないぞ?

「おお!貴方は…」
「先日はありがとうございました。おかげで洗礼名もフランシスコに決まりました」
「何と素敵なお名前!!これで貴方も主が正しき方へと導いて下さるデショウ…」
「同感です。父が慈善金を寄付していたのは知っておりましたが、何故もっと早くに洗礼を受けなかったかと…それが悔やまれます」

何時の間にか私と星の金貨様の間に割り込み、主演男優賞モノの演技で眉間に皺なんぞ寄せる黒鳥。
洗礼名フランシスコって………頭のてっぺんに禿でも作るのかよ。
私を無視したまま星の金貨様と会話を続ける黒鳥。おい、今彼女と話をしているのは私だぞ!

「……新田会長…」
「おや?仙道さん、キミもいたのか?」
「さっき私に話しかけてきたんですけど?ところで、何故ここにいるんです?どなたかお探しでしょうか?」
「偶然ってヤツだな。たまたまこの店の付近を歩いていたら先日教会でお会いした人を見かけたものだから…つい」

いけしゃあしゃあと……絶対この男はわざと私と星の金貨様の話に割り込んだにきまってる!!
そう訝しがる私だが、肝心な彼女はいつもの如く十字を切ると…

「おお!貴方は沙織ちゃんの知合いでもあったのですか!なんという素晴しい偶然なのデショウ!これも全て神のお導きというもの…」

………と、いつもの如く恍惚とした表情を浮かべられたのだった。

ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第二話2009/04/28 10:49

結局先日の練習試合はわずかな差でウチの高校が負けた。だが何故か黒鳥も機嫌が良かったので私は早々に引き上げた。
あの試合で私はコロポックル様と知り合う事が出来、その上彼女にすんばらしい女子を紹介して貰えたのだ。

「ふっふっふ……コロポックル様にバービーと、もう一人はちょっとミステリアスな雰囲気の女子だからジプシーでいいな…」

登録済みの携帯番号とメールに、呼び名を入力しながらほくそ笑む私。
なんとバービーこと、五条 芹香はあの試合で私がやらされるであろうタイムキーパーをしていたのだ。
そして彼女とジプシーこと市橋 珠洲もバスケ経験者なので、いろいろと教えてくれるという約束までとりつけた。
勿論それと引き換えに私が彼女達と約束したのは勉強を見てあげるという事。
これで今度の招待試合は何とかなりそうだ…!と、胸を撫で下ろした私の携帯に入った一通のメール。

『今度の土曜日に話したい事があるんやけど、都合はどう?』

特に予定がなかったので、いつも利用している喫茶店の名前を告げそこでの待ち合わせにした。
そして少し早めに来た私はいつも頼むカモミールティーを飲んでいるのだ。

……メアドもゲットしたしな。それにしてもいいねぇ秀学館は、制服も生徒も華やかでさ。

「へぇ…今度はコロポックルにバービー、それと…ジプシーってか?」
「新しいお友達だ…って!おい!ジャン!いつの間に!?」
「沙織ちゃんがニコニコ顔で入ってきた時声かけよう思たんやけど、トリップしてるんやろなぁ~思てずっとタイミング計ってた」

本日私をここに呼び出した張本人であるジャンが私の携帯を覗き込んでいたのだ。
のっぽで細身、色白の肌とブロンドの箒頭(ほうきあたま)、そしてグリーンアイズの持ち主であるこの男は日仏ハーフであり、私の婚約者なのである。

「で、とても暇人とは思えない医学生であるアンタがこんなとこでお茶してる時間があるとは思えんのだが…」
「つれないなぁ沙織ちゃん。曲がりなりにも俺ら恋人同士やで?しかも結婚の約束までしとる仲やんか」

そう言ってウィンクするジャン。
するとあちらこちらからカシャカシャという機械音と共にたかれるフラッシュ…
まぁ、観賞用には持って来いの外見だからなぁ…
どさくさに紛れて自分が飲んでたコーヒーと荷物を私の隣に置き、いつもの人懐こい笑顔を浮かべている。

「我愛しのフィアンセよ、ご機嫌うるわしゅう…」
「やめろ。折角の紅茶が不味くなる」
「相変わらず口悪いなぁ。でも、そんな照れ屋さんなところも好きやで?」
「っっ…!//////」

そう言って私の手を取り接吻をする関西訛りの仏蘭西男。
すると、途端に悲鳴が飛び交う店内

……だから極力来たくは無かったのだ。

しかし、この目の前の男はそんな店内の様子を無視するかのように平然とした顔でさらに話を続ける。

「なぁ沙織ちゃん、この後なんやけど」
「約束だからな。今のところ予定は入れてない」
「なら、ここでもうちょっと待っとれる?今自分を捕まえたゆうメールしたから」
「メール?」
「くす…そのうちわかるよって」

ニコニコ顔でそう言うジャン。しかし、私はとてつもなく嫌な予感がした。
そして数分後…

「きゃあああああ!アレORITOじゃないっ!」
「ナマよ!ナマ!」
「写メ!写メ!って!ちょっと私の携帯どこよ!?」
「もしもし~~あ!あたし!!ね、今目の前にORITOがいんの!え?場所どこって?えっと……」

一斉に騒々しくなる店内。そしてさっきの倍の量で飛び交うフラッシュと機械音。
…これって、まさか…………殿下?

「くす…只今人気急上昇中の新人俳優は流石にちゃうなぁ…」
「ほっ…本当に殿下?」
「くすくす…織斗だけやないで?」
「へ?」

ジャンの言葉に疑問符だらけの私。すると…

「ちょおっ!今度はナオが来たよっ!」
「うっそぉ~!マジぃ~?」
「ガチに超ヤバツーショットってやつぅ~?」

あの変な日本語と語尾伸ばしは………偏差値が可愛らしい数字で有名な隣の女子高の生徒だな。
っつーか、なんで上まで来るんだ?
なるべく二人に見つからないように慌てて下を向く私。しかし…

「お~~い」

この馬鹿!何でわざわざ手を振るのだっ!!

「ジャン!そこにいたのか…!」

げっ……ジャンが殿下に見つかった!!やばい!どこかに隠れなくては…!テーブルの下にでも潜るかそれとも…
私はいつも外出の際に持ち歩いている大き目のバックをテーブルの上に置き、自分を隠すようにしたのだが…

「「沙織!!」」

万事休す………神様、私の安らぎの一時を返して下さい!
私の姿を見つけるやいなや、二人の従兄は長いコンパスを有効に使って時折テーブルに座っている女性に笑顔を振りまきつつこちらへとやってきた。
仕方なく私も開き直って自分の前に築いた壁を取り除き、営業スマイルを貼り付け立ち上がる。

「お…お久しぶりです。織斗兄様、那織人兄様」
「よっ沙織、お前しばらく見ない間にまた背が伸びたんじゃねーか?」

上…それはあっしには禁句ですぜ?何しろこの間測ったら175cmになってたんだから…
ああ!コロポックル様のような愛らしい身長になりたいっ!

「くすくす…いいんだよ那織人。沙織は俺達に合わせて成長してるんだから」

ひょい

「ひゃあっ!ちょっ…」
「ん…ちょうど抱えやすいサイズだね。これ以上小さかったら俺の子供と間違えられそうだ」

……会った早々に縦抱っこかよ。そりゃあ身長が193cmもある殿下からしてみればあのコロポックル様だとお子様になってしまわれるかもしれないけどさ…
それよりさっきから視線が刺さって痛いのだっ!頼むから自分らが有名人だって自覚してくれ!!

「くすくす…沙織ちゃんのゆうたとおりや。織斗、お前ほんまに抱っこちゃんなんやなぁ…くすくす」
「何とでも言え。俺にとって沙織は可愛い可愛い従妹なんだ」
「あ~あ、織斗兄のシスコンがまた始まったよ。ってか、沙織が恥ずかしがってるし、そろそろ降ろしてあげたら?」

ほっ…上、あんたたまには良い事言うねぇ……って!こら!頭ナデナデするな!私は子供じゃない!
っつーか、この状況ってやばいんでない?ほら、窓の外にいつの間にかこちらを覗き込む人だかりが…

「くすくす…やっぱ芸能人二人来るとちゃうなぁ…、織斗、場所移さへんか?」
「そうだな。ジャン、お前には聞きたい事が沢山あるし…」
「それじゃ手っ取り早く俺のマンションにでもすっか?」

うっ…上のマンションだぁ~?いえいえ!謹んで遠慮致します。
私は当然の如く首をブンブン横に振って拒否の意を示す。

「それじゃ俺んちにすっべ」
「茂織叔父さんのパン屋か?」
「いや、離れの実家の方。沙織を連れてけばお袋が喜ぶし、そこのアンタも織斗兄の大学の友人なら歓迎されると思うけど?」

茂織叔父さんのパンかぁ……最近食べてないんだよな。焼きたてがめっちゃ上手くてさ、結構近所の主婦に評判だったりするんだ。
へっへ~~何か楽しみかも…

「それじゃあ決まりだな。沙織、ジャンの案内を頼む。俺と那織人はそれぞれ時間をずらしてここを出よう」
「だな。今だって外パニクってるし…有名人になるのも良し悪しってか?」
「ほな行きまひょか。沙織ちゃん、ナビ頼むで~」

ジャン、もしかしてここに教授の車で来たんじゃねーだろうな?

「くすくす…心配せんでもええよ?今日は俺の車で来たさかい。ほなお先~」
「織斗兄様、那織人兄様、それじゃ…」

こら!手を繋ぐな!!殿下が睨んでるんだぞっ!!
……っっ!!!なっ…なしてそんな所を触るのだぁ~~っ!!

「嬉しいなぁ…沙織ちゃんをこうして堂々とエスコート出来るんやから」
「こっ…腰!腰!」
「ささ、姫、参りましょうか?」

いつの間にか私にまで携帯が向けられてるのは気のせいか?
だ~か~ら、見世物じゃねー!
お前も接近し過ぎなんじゃ!ジャン!!西欧の民はこんなにベタベタして羞恥という感情を持たないのか?
殿下以上にスキンシップ過剰な婚約者(あくまでも契約上のだが…)に、私は思わず頭を抱えたのだった。

ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第一話2009/03/29 10:05

「だから、形だけなんです!」
『婚約は婚約だよな?』
「彼は石動のおじ様に内緒でバンド活動をしてるんですよ。だから私はその隠れ蓑で…」
『だが、あの織斗兄の友人だろ?女慣れしてるに決まってるじゃねーか!』

あ~~~~っ!ったく!そろいもそろってシスコンかよ従兄共!
先日のジャンの宣戦布告(?)により、あっという間に殿下から殿、そして上へと伝わってしまった私とジャンの婚約話。

『俺達はな?お前の事が心配なんだよ。世間知らずで男慣れしてない可愛い従妹がみすみすスケコマシで仏蘭西ヤローの餌食になるのを見てられねーんだ』

自分の事を棚の上に置いてよく言うよ…
あんただってファンの子をとっかえひっかえヨロシクやってるじゃねーか…

「と・に・か・く、織斗兄様にも武織兄様にも申し上げたとおり、私は今すぐ結納する訳じゃありませんから」
「結納~~っ!!!」

キーーーーーーーン
そろいもそろって同じ反応すんなよ…耳が痛ぇだろ…

「それじゃ、私忙しいのでこれで失礼しますね」
『こら待て!沙織!』

ふぅ………やっと切れたわい。
って…!!………ココハドコ?

「……これはもしかして…迷子った?」

今私がいるのはウチの高校の練習試合の相手である秀学館高校である。
そして本日がその練習試合の日。勿論私は黒鳥に言われて嫌々応援に来たのだが、電車を降りた直後に上から電話がかかってきたため、話しながら歩いていたら…このザマなのだ。

…さて困ったぞ?帰るにも出口がどこだかわからんし、かといって秀学館の生徒を捕まえて聞くのも、今ここにいる北都の生徒は応援に来たとわかるから嫌な顔をされるに決まってるし…

私が俯いてとぼとぼ歩いていたその時…

「あの……」

まさに鈴を転がしたような可愛らしいソプラノが聞こえて来たのだ。
思わず振り返る私。

「へ?あ………コロポックル…」

そこに立っていたのは知恵と勇気の小人コロポックル様…じゃなくて、背が低くて大きな瞳の愛らしい、長い黒髪の少女だったのだ。

「はい?」
「あっ…ごめんなさい。何でもないです」

突然私の口から出た謎の発言にきょとんと首を傾げる少女。
私は咄嗟に頭を下げた。
すると、彼女はにっこりと微笑んで…

「あの、北都高校の応援の方ですよね?もしよかったら私第一体育館まで案内しましょうか?」

おお!何と心優しき乙女なんだ!だが、私は相手チームの応援に来た余所者であり…

「え?い…いいんですか?でももう試合始まっちゃってるんじゃ…」

恐らく彼女も自分の学校のチームの応援に行く予定なのだろう。それに、コロポックル様がこんなところをウロウロされてたら邪な精神を持った不当な輩がいつ出没するとも限らんしな…。

「くすくす…おそらく始まっているでしょうけど、だからって入れない事は無いと思いますよ?」

ああ!女神様!コロポックル様!この世にこんな絵に描いたようなキヨラカ乙女がいたとは…!!

「何分初めてお伺いしたもので恥ずかしくも迷子に何ぞなってしまい、声をかけようにも対戦相手の応援の方だと思うとかけられず、かと言って学校に戻る事も出来ず困っていたんです。
まさに天の助け!今私には貴方の背後に後光が見えるようですよ!」

しまったぁ~~~っ!!嬉しくてつい本性がっ!

「っぷ…!後光って大袈裟な…」
「いえいえ。本来なら対戦校の生徒である私に手を差し伸べるなど敵に塩を送るような行為。しかし、貴方はいとも自然に私に話しかけて下さった。
申し遅れました。私、北都高校1年1組 仙道 沙織と申します。本日はウチの生徒会長である新田 剛史の積年のライバル…とヤツが勝手に思いこんでおるだけですが…の見浪 昴氏がスタメンで出るという事で応援に来るよう強制されまして…」

コロポックル様が眩い笑顔を向けて下さったのを良い事にちゃっかりと自分の自己紹介までしてしまう。
すると、私が放った言葉に不快な内容があったのか、突然コロポックル様の笑顔が曇ったのだ。

「新田 剛史さん…彼、生徒会長なんですか…?」
「おや?ヤツの事をご存知で?ああ!もしかしてヤツの被害に遭われたとか?」
「い…いいえ!被害ってそんな大層なものではないです!」
「ほっ…それなら良かったです。あの男は本校だけでなく他校の人間まで手を出すという見境の無いヤツですから…まったく、後処理をさせられる身にもなれってんだ…」

黒鳥の分際で恐れ多くもコロポックル様に迷惑をかけようとは…不届き千万!!
及ばずながらこの私、貴方様をお助けする為尽力をそそぎましょう!

「私の連絡先です。何かありましたら携帯・家電・メールアドレスがありますのでお好みの手段でご一報下さい。あ、メアドは携帯とPCと両方ありますのでどちらでも。
それと家電は私の名前を出せば勝手に子機に繋げてくれますので…」
「は…はい。どうもご丁寧に…」

ほっ…勢いで出したとは言え、この手作り名刺を受け取って頂けたようだ…

「そ…それじゃ第一体育館に行きましょうか?」
「是非お願い致します。あ、このお礼をさせて頂きたいのでお差支えなければ貴方の連絡先など頂きたく…」
「くす…別にお礼なんて良いですよ?でも、これも何かの縁だと思いますから…」

な…何とお心の広いコロポックル様だろう。駄目もとで打診したのに、こんな余所者なんかに携帯番号を教えて下さるとは…!しかも何かのご縁というありがたいお言葉まで!
……黒鳥よ、今日だけはキサマの行いに感謝してやる。
コロポックル様は私より小さいお手をエンジ色のスカートのポケットに入れられ、キラキラピンクの可愛らしい携帯を取り出された。
するとすかさず私も真っ黒スカートのポケットからモノトーンの携帯を取り出す

「……赤外線通信完了」
「え?今のでもう登録出来たんですか?」

ほぅ…コロポックル様もジャンと同じ人種なのか…

「あはは…世の中便利になったものです。これでもう貴方…すみません、お名前を聞いてもいいですか?」
「あ、ごめんなさい。私、平司 芽衣です。…って!あの、私も1年だから敬語は使わなくていいよ?」

そうか。コロポックル様も私と同い年だったのか。芽衣さん、うん、可愛らしいお名前だ

「これは失礼。ふむ…なるほど、リボンの色で学年が分かれていらっしゃるんで?
…っとと!重ね重ね失礼。で、先ほど私が行ったのは赤外線通信という手段で、こうやってかざすだけでデーターを送ったり受け取る事が出来るんだな。
興味があったら今度試してみてはいかが?」
「うん。とても勉強になったよ。私、実は携帯ってまだあんまり慣れてなくって…」
「ほぅ…今時の女子高校生にしては珍しくないか?っても、私も実は使い始めてまもないのだが…」

何を隠そう携帯なるものを持ったのは今年の四月からだし、今の携帯は数日前に機種変更したばかりである。

「ええ~~っ!それでそんな事まで出来るって凄い!」
「いや、私の性格上どうしても取説を一通り読まないと操作出来ないので…」
「トリセツ?」
「取扱い説明書…と言えばお分かりかな?」
「もしかしてあの分厚い本の事?私買ってから一度も読んだ事ないよ?」
「あははは…私からしてみれば一度も読まずに操作出来る平司さんの方が凄いと思うが?」

コロポックル様から発せられる癒しオーラにより、他所の敷地であるにも拘らずすっかり寛いでいる私。
ああ、今日はなんと良い日なのだろう…

「サオ~!あんたいったいどこに…って、もしかして平司さん?さっき珠洲がえらい剣幕で探してたよぉ~?」

声のした方を向くと、我相棒小日向 海晴がパタパタと走って来たのだ。

「おお相棒。丁度良い所に」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あんた、迷子になったんでしょ?」
「もしかして小日向さん、沙織さんと知り合いなの?」

うわぁ~~コロポックル様が私の事を沙織と呼んでくださってるではないかっ!!
ならば私もご好意に甘えてコロポックル様の事を名前で呼ばせて頂こうか…

「芽衣さん、貴方は我相棒ともお知り合いなのかな?うんうんこれも神のお導きというもの…」
「暢気な事言ってないでさっさと行くよ!あと少しで第一クォーターが終りそうなんだから!ほら、平司さんも急いで!今珠洲が新田に食って掛かって大変なんだよ!」

相変わらず忙しないヤツだ。相棒に急き立てられ、無理やり私は目的地まで走らされたのだった。
………黒鳥めぇ~~~っ!!