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ミューズの溜息続編 ミューズの戸惑い 第一話2009/03/29 10:05

「だから、形だけなんです!」
『婚約は婚約だよな?』
「彼は石動のおじ様に内緒でバンド活動をしてるんですよ。だから私はその隠れ蓑で…」
『だが、あの織斗兄の友人だろ?女慣れしてるに決まってるじゃねーか!』

あ~~~~っ!ったく!そろいもそろってシスコンかよ従兄共!
先日のジャンの宣戦布告(?)により、あっという間に殿下から殿、そして上へと伝わってしまった私とジャンの婚約話。

『俺達はな?お前の事が心配なんだよ。世間知らずで男慣れしてない可愛い従妹がみすみすスケコマシで仏蘭西ヤローの餌食になるのを見てられねーんだ』

自分の事を棚の上に置いてよく言うよ…
あんただってファンの子をとっかえひっかえヨロシクやってるじゃねーか…

「と・に・か・く、織斗兄様にも武織兄様にも申し上げたとおり、私は今すぐ結納する訳じゃありませんから」
「結納~~っ!!!」

キーーーーーーーン
そろいもそろって同じ反応すんなよ…耳が痛ぇだろ…

「それじゃ、私忙しいのでこれで失礼しますね」
『こら待て!沙織!』

ふぅ………やっと切れたわい。
って…!!………ココハドコ?

「……これはもしかして…迷子った?」

今私がいるのはウチの高校の練習試合の相手である秀学館高校である。
そして本日がその練習試合の日。勿論私は黒鳥に言われて嫌々応援に来たのだが、電車を降りた直後に上から電話がかかってきたため、話しながら歩いていたら…このザマなのだ。

…さて困ったぞ?帰るにも出口がどこだかわからんし、かといって秀学館の生徒を捕まえて聞くのも、今ここにいる北都の生徒は応援に来たとわかるから嫌な顔をされるに決まってるし…

私が俯いてとぼとぼ歩いていたその時…

「あの……」

まさに鈴を転がしたような可愛らしいソプラノが聞こえて来たのだ。
思わず振り返る私。

「へ?あ………コロポックル…」

そこに立っていたのは知恵と勇気の小人コロポックル様…じゃなくて、背が低くて大きな瞳の愛らしい、長い黒髪の少女だったのだ。

「はい?」
「あっ…ごめんなさい。何でもないです」

突然私の口から出た謎の発言にきょとんと首を傾げる少女。
私は咄嗟に頭を下げた。
すると、彼女はにっこりと微笑んで…

「あの、北都高校の応援の方ですよね?もしよかったら私第一体育館まで案内しましょうか?」

おお!何と心優しき乙女なんだ!だが、私は相手チームの応援に来た余所者であり…

「え?い…いいんですか?でももう試合始まっちゃってるんじゃ…」

恐らく彼女も自分の学校のチームの応援に行く予定なのだろう。それに、コロポックル様がこんなところをウロウロされてたら邪な精神を持った不当な輩がいつ出没するとも限らんしな…。

「くすくす…おそらく始まっているでしょうけど、だからって入れない事は無いと思いますよ?」

ああ!女神様!コロポックル様!この世にこんな絵に描いたようなキヨラカ乙女がいたとは…!!

「何分初めてお伺いしたもので恥ずかしくも迷子に何ぞなってしまい、声をかけようにも対戦相手の応援の方だと思うとかけられず、かと言って学校に戻る事も出来ず困っていたんです。
まさに天の助け!今私には貴方の背後に後光が見えるようですよ!」

しまったぁ~~~っ!!嬉しくてつい本性がっ!

「っぷ…!後光って大袈裟な…」
「いえいえ。本来なら対戦校の生徒である私に手を差し伸べるなど敵に塩を送るような行為。しかし、貴方はいとも自然に私に話しかけて下さった。
申し遅れました。私、北都高校1年1組 仙道 沙織と申します。本日はウチの生徒会長である新田 剛史の積年のライバル…とヤツが勝手に思いこんでおるだけですが…の見浪 昴氏がスタメンで出るという事で応援に来るよう強制されまして…」

コロポックル様が眩い笑顔を向けて下さったのを良い事にちゃっかりと自分の自己紹介までしてしまう。
すると、私が放った言葉に不快な内容があったのか、突然コロポックル様の笑顔が曇ったのだ。

「新田 剛史さん…彼、生徒会長なんですか…?」
「おや?ヤツの事をご存知で?ああ!もしかしてヤツの被害に遭われたとか?」
「い…いいえ!被害ってそんな大層なものではないです!」
「ほっ…それなら良かったです。あの男は本校だけでなく他校の人間まで手を出すという見境の無いヤツですから…まったく、後処理をさせられる身にもなれってんだ…」

黒鳥の分際で恐れ多くもコロポックル様に迷惑をかけようとは…不届き千万!!
及ばずながらこの私、貴方様をお助けする為尽力をそそぎましょう!

「私の連絡先です。何かありましたら携帯・家電・メールアドレスがありますのでお好みの手段でご一報下さい。あ、メアドは携帯とPCと両方ありますのでどちらでも。
それと家電は私の名前を出せば勝手に子機に繋げてくれますので…」
「は…はい。どうもご丁寧に…」

ほっ…勢いで出したとは言え、この手作り名刺を受け取って頂けたようだ…

「そ…それじゃ第一体育館に行きましょうか?」
「是非お願い致します。あ、このお礼をさせて頂きたいのでお差支えなければ貴方の連絡先など頂きたく…」
「くす…別にお礼なんて良いですよ?でも、これも何かの縁だと思いますから…」

な…何とお心の広いコロポックル様だろう。駄目もとで打診したのに、こんな余所者なんかに携帯番号を教えて下さるとは…!しかも何かのご縁というありがたいお言葉まで!
……黒鳥よ、今日だけはキサマの行いに感謝してやる。
コロポックル様は私より小さいお手をエンジ色のスカートのポケットに入れられ、キラキラピンクの可愛らしい携帯を取り出された。
するとすかさず私も真っ黒スカートのポケットからモノトーンの携帯を取り出す

「……赤外線通信完了」
「え?今のでもう登録出来たんですか?」

ほぅ…コロポックル様もジャンと同じ人種なのか…

「あはは…世の中便利になったものです。これでもう貴方…すみません、お名前を聞いてもいいですか?」
「あ、ごめんなさい。私、平司 芽衣です。…って!あの、私も1年だから敬語は使わなくていいよ?」

そうか。コロポックル様も私と同い年だったのか。芽衣さん、うん、可愛らしいお名前だ

「これは失礼。ふむ…なるほど、リボンの色で学年が分かれていらっしゃるんで?
…っとと!重ね重ね失礼。で、先ほど私が行ったのは赤外線通信という手段で、こうやってかざすだけでデーターを送ったり受け取る事が出来るんだな。
興味があったら今度試してみてはいかが?」
「うん。とても勉強になったよ。私、実は携帯ってまだあんまり慣れてなくって…」
「ほぅ…今時の女子高校生にしては珍しくないか?っても、私も実は使い始めてまもないのだが…」

何を隠そう携帯なるものを持ったのは今年の四月からだし、今の携帯は数日前に機種変更したばかりである。

「ええ~~っ!それでそんな事まで出来るって凄い!」
「いや、私の性格上どうしても取説を一通り読まないと操作出来ないので…」
「トリセツ?」
「取扱い説明書…と言えばお分かりかな?」
「もしかしてあの分厚い本の事?私買ってから一度も読んだ事ないよ?」
「あははは…私からしてみれば一度も読まずに操作出来る平司さんの方が凄いと思うが?」

コロポックル様から発せられる癒しオーラにより、他所の敷地であるにも拘らずすっかり寛いでいる私。
ああ、今日はなんと良い日なのだろう…

「サオ~!あんたいったいどこに…って、もしかして平司さん?さっき珠洲がえらい剣幕で探してたよぉ~?」

声のした方を向くと、我相棒小日向 海晴がパタパタと走って来たのだ。

「おお相棒。丁度良い所に」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あんた、迷子になったんでしょ?」
「もしかして小日向さん、沙織さんと知り合いなの?」

うわぁ~~コロポックル様が私の事を沙織と呼んでくださってるではないかっ!!
ならば私もご好意に甘えてコロポックル様の事を名前で呼ばせて頂こうか…

「芽衣さん、貴方は我相棒ともお知り合いなのかな?うんうんこれも神のお導きというもの…」
「暢気な事言ってないでさっさと行くよ!あと少しで第一クォーターが終りそうなんだから!ほら、平司さんも急いで!今珠洲が新田に食って掛かって大変なんだよ!」

相変わらず忙しないヤツだ。相棒に急き立てられ、無理やり私は目的地まで走らされたのだった。
………黒鳥めぇ~~~っ!!

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