白衣の天然貴公子 第六話 ― 2009/06/24 10:33
「ぐすっ…ひっく…ひっく……ふぇっ…」
「……らん姉さん、いい加減泣き止んでよ。」
「らって…らって…うぇ~んさんちゃぁ~ん!!」
「ああ。よしよしよし。泣くのはいいけどこれ以上くしゃみはやめてね?おかげでこの部屋ポルターガイスト状態になってるから」
そう言って珊瑚はハンカチを濡らしている長姉の藍晶にマグカップを渡した。
…勿論、空中を浮遊している目覚まし時計やクッション、リモコン類を避けつつだが…
「姉さん、ブレスレットを失くしたんだって?」
翡翠はそう言って呆れ顔のまま藍晶の部屋のドアに腕をくんだまま凭れかかった。
昨日夜勤だった彼女は今朝帰宅し、今のいままで隣で寝ていたのだ。
「ぐすっ…すいちゃんおはよ…」
「ったく!どうすんのさ!あたしならともかく姉さんはサイコキネシスだろ?仕事中に暴走したら大事だぜ?」
「そうなのよっ!!ね、すいちゃんどうしよぉ~~っ!私…私……ふぇっ…ふぇっ…」
顔をぐしゃぐしゃにしながら妹特性の極甘ミスクティーをすすっていた藍晶は、翡翠の言葉に反応したのかさらに号泣し始めた。
すると鼻がムズムズしてきたらしくサイコでマグカップをサイコで浮かせると同時にハンカチを鼻にあて…
「わわっ!くしゃみはすんなっ!!」
「藍姉さんストーーーーーーーーップ!!」
そんな長女の様子を見て翡翠と珊瑚は慌てて藍晶に駆け寄った。しかし…
「ぶへぇ~~っくしょんっ!!」
「「ぎゃあああああああっ!!!」」
藍晶がハンカチに向かって一際大きいくしゃみをすると、突然CDコンポが宙に浮いたのだった。
楠家長女の藍晶26歳は情緒不安定になると特殊能力が暴走するのだ。普段は能力制御の為にアイオライトのブレスレットをしている。
実は昨晩会社から帰宅し、スーツのまま寝てしまった藍晶は朝起きるとスーツを着替えシャワーを浴びに行った。
そしてインナーに着替えてほっとした瞬間にシャワーを浴びる前にブレスレットを外してなかった事に気がつき部屋中を探したという訳なのだ。
「明日からどうしよぉ~っ!!!」
「と…とりあえずさ、らん姉さん、交番に行って落し物の届けを出してみたら?」
「い…いや、それよか明日の朝一で会社の受付嬢に聞いた方が早いかもな…」
CDコンポをよけつつ翡翠と珊瑚は藍晶にそうアドバイスしたのだった。
**********************
「ね?あの話聞いた?」
「うんうん!!グレードアップした『彼』が帰ってくるんでしょ!」
藍晶のブレスレット紛失騒ぎがあったその翌日の昼過ぎ、翡翠がナース服に着替えてスタッフステーションに行くと、後輩達が興奮状態で何やら噂話をしていた。
「おはよ。何か彼女達楽しそうだよね」
「おはよう。ま、あの娘達にとっては楽しい話題だからね…」
同僚の姿を見つけた彼女は挨拶すると同時に疑問を投げかけたのだが、芳乃は複雑そうな表情を浮かべつつ曖昧な返答をしただけだった。
しかし翡翠を含めた遅番組が来たのを確認した婦長や主任らがミーティングを始めたので、彼女はそれ以上芳乃に聞くことが出来なかった。
そして引継ぎも終わり、芳乃を含む夜勤組みは早々とスタッフステーションから出て行ったのだった。
「…気になるけどあいつが話しくなさそうな話題みたいだから諦めるか…」
そう呟くと翡翠はワゴンの上のモノを確認し自分が担当している病室へと向かった。
「おっす!皆、ちゃんとメシは食ったか?」
「「「「「翡翠ねえちゃんっ!!!」」」」」
病室のドアを開けるやいなや駆け寄って来て彼女の腰回りに纏わりつく男児達。
「何だお前ら?どうした?ん?」
いつもは先頭を切って何かけしかけてくるか、元気良く挨拶してくる太一が彼女の下腹部あたりに顔を押し付けているのだ。
そして他の男児達の表情はとても不安げなのである。
そんな彼等に翡翠はワゴンを適当な位置に置くと優しく話しかけた。すると…
「そいつら今朝からずっとその調子だぜ?」
いつの間に来たのか洋祐が入り口のところに立っていたのだ。
「今朝から?…ってか洋祐、お前帰ったんじゃなかったのかよ?」
そう。実は洋祐は昨晩は芳乃と同じ夜勤だったのだ。しかし驚く翡翠を無視するかのように洋祐はツカツカと病室内に入ってきて…
「一番大事な事伝え忘れたから言いに来た」
「大事な事って?」
「(こそっ)あのな、近日中に小山内センセが帰国するんだと」
怪訝そうな表情の翡翠に耳打ちするように囁く洋祐。すると……
「だいじょうぶか?翡翠ねえちゃん」
「武(イサム)…」
「オレタチあんたの味方だからな!」
「正二…」
「ナニか言われたらココにきてよ」
「佑太…」
「シンパイすんな!『アイツ』が翡翠ねえちゃんにナニかしたらオレがタイジしてやる!」
「太一……?」
「ボクタチあなたのチカラになりたいんです」
「航太郎まで……」
不安そうに翡翠を見上げる十の瞳。翡翠はそれぞれの言葉で訴えてくる男児達の顔を見つめた。
洋祐の話を聞いた直後彼女は一瞬だけ苦痛を浮かべたかもしれない。しかしすぐもとの表情に戻った筈だった。だが敏感な子供達はそれを見逃す事が無かったのだろう。
更にひっつき虫の如く彼女の腰周りに張り付いて離れなくなった五人の男児。そんな子供達の様子を見て洋祐は苦笑しながら呟いた。
「ちっせえボディーガードが五人もついてるなら大丈夫だよな?」
「洋祐……もしかしてこいつらは…」
「ああ。口が軽い後輩達の噂話を聞いたんだろうよ。詳しい事はまだ決まってねーらしいんだが、俺達でなるべくフォローしてやるからお前もあまりこいつらの前で取り乱すなよ?」
洋祐はポンと翡翠の肩を軽く叩くと後手を振って病室から出て行ったのだった。
「……らん姉さん、いい加減泣き止んでよ。」
「らって…らって…うぇ~んさんちゃぁ~ん!!」
「ああ。よしよしよし。泣くのはいいけどこれ以上くしゃみはやめてね?おかげでこの部屋ポルターガイスト状態になってるから」
そう言って珊瑚はハンカチを濡らしている長姉の藍晶にマグカップを渡した。
…勿論、空中を浮遊している目覚まし時計やクッション、リモコン類を避けつつだが…
「姉さん、ブレスレットを失くしたんだって?」
翡翠はそう言って呆れ顔のまま藍晶の部屋のドアに腕をくんだまま凭れかかった。
昨日夜勤だった彼女は今朝帰宅し、今のいままで隣で寝ていたのだ。
「ぐすっ…すいちゃんおはよ…」
「ったく!どうすんのさ!あたしならともかく姉さんはサイコキネシスだろ?仕事中に暴走したら大事だぜ?」
「そうなのよっ!!ね、すいちゃんどうしよぉ~~っ!私…私……ふぇっ…ふぇっ…」
顔をぐしゃぐしゃにしながら妹特性の極甘ミスクティーをすすっていた藍晶は、翡翠の言葉に反応したのかさらに号泣し始めた。
すると鼻がムズムズしてきたらしくサイコでマグカップをサイコで浮かせると同時にハンカチを鼻にあて…
「わわっ!くしゃみはすんなっ!!」
「藍姉さんストーーーーーーーーップ!!」
そんな長女の様子を見て翡翠と珊瑚は慌てて藍晶に駆け寄った。しかし…
「ぶへぇ~~っくしょんっ!!」
「「ぎゃあああああああっ!!!」」
藍晶がハンカチに向かって一際大きいくしゃみをすると、突然CDコンポが宙に浮いたのだった。
楠家長女の藍晶26歳は情緒不安定になると特殊能力が暴走するのだ。普段は能力制御の為にアイオライトのブレスレットをしている。
実は昨晩会社から帰宅し、スーツのまま寝てしまった藍晶は朝起きるとスーツを着替えシャワーを浴びに行った。
そしてインナーに着替えてほっとした瞬間にシャワーを浴びる前にブレスレットを外してなかった事に気がつき部屋中を探したという訳なのだ。
「明日からどうしよぉ~っ!!!」
「と…とりあえずさ、らん姉さん、交番に行って落し物の届けを出してみたら?」
「い…いや、それよか明日の朝一で会社の受付嬢に聞いた方が早いかもな…」
CDコンポをよけつつ翡翠と珊瑚は藍晶にそうアドバイスしたのだった。
**********************
「ね?あの話聞いた?」
「うんうん!!グレードアップした『彼』が帰ってくるんでしょ!」
藍晶のブレスレット紛失騒ぎがあったその翌日の昼過ぎ、翡翠がナース服に着替えてスタッフステーションに行くと、後輩達が興奮状態で何やら噂話をしていた。
「おはよ。何か彼女達楽しそうだよね」
「おはよう。ま、あの娘達にとっては楽しい話題だからね…」
同僚の姿を見つけた彼女は挨拶すると同時に疑問を投げかけたのだが、芳乃は複雑そうな表情を浮かべつつ曖昧な返答をしただけだった。
しかし翡翠を含めた遅番組が来たのを確認した婦長や主任らがミーティングを始めたので、彼女はそれ以上芳乃に聞くことが出来なかった。
そして引継ぎも終わり、芳乃を含む夜勤組みは早々とスタッフステーションから出て行ったのだった。
「…気になるけどあいつが話しくなさそうな話題みたいだから諦めるか…」
そう呟くと翡翠はワゴンの上のモノを確認し自分が担当している病室へと向かった。
「おっす!皆、ちゃんとメシは食ったか?」
「「「「「翡翠ねえちゃんっ!!!」」」」」
病室のドアを開けるやいなや駆け寄って来て彼女の腰回りに纏わりつく男児達。
「何だお前ら?どうした?ん?」
いつもは先頭を切って何かけしかけてくるか、元気良く挨拶してくる太一が彼女の下腹部あたりに顔を押し付けているのだ。
そして他の男児達の表情はとても不安げなのである。
そんな彼等に翡翠はワゴンを適当な位置に置くと優しく話しかけた。すると…
「そいつら今朝からずっとその調子だぜ?」
いつの間に来たのか洋祐が入り口のところに立っていたのだ。
「今朝から?…ってか洋祐、お前帰ったんじゃなかったのかよ?」
そう。実は洋祐は昨晩は芳乃と同じ夜勤だったのだ。しかし驚く翡翠を無視するかのように洋祐はツカツカと病室内に入ってきて…
「一番大事な事伝え忘れたから言いに来た」
「大事な事って?」
「(こそっ)あのな、近日中に小山内センセが帰国するんだと」
怪訝そうな表情の翡翠に耳打ちするように囁く洋祐。すると……
「だいじょうぶか?翡翠ねえちゃん」
「武(イサム)…」
「オレタチあんたの味方だからな!」
「正二…」
「ナニか言われたらココにきてよ」
「佑太…」
「シンパイすんな!『アイツ』が翡翠ねえちゃんにナニかしたらオレがタイジしてやる!」
「太一……?」
「ボクタチあなたのチカラになりたいんです」
「航太郎まで……」
不安そうに翡翠を見上げる十の瞳。翡翠はそれぞれの言葉で訴えてくる男児達の顔を見つめた。
洋祐の話を聞いた直後彼女は一瞬だけ苦痛を浮かべたかもしれない。しかしすぐもとの表情に戻った筈だった。だが敏感な子供達はそれを見逃す事が無かったのだろう。
更にひっつき虫の如く彼女の腰周りに張り付いて離れなくなった五人の男児。そんな子供達の様子を見て洋祐は苦笑しながら呟いた。
「ちっせえボディーガードが五人もついてるなら大丈夫だよな?」
「洋祐……もしかしてこいつらは…」
「ああ。口が軽い後輩達の噂話を聞いたんだろうよ。詳しい事はまだ決まってねーらしいんだが、俺達でなるべくフォローしてやるからお前もあまりこいつらの前で取り乱すなよ?」
洋祐はポンと翡翠の肩を軽く叩くと後手を振って病室から出て行ったのだった。
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